← Posts

イベント参加ログ:EMカンファレンス アフターイベント

Views (30d)
--PV
Word Count
4,178chars
Reading Time
9min
Published
67days ago

2026年3月13日に開催された「EMconf(エンジニアリングマネージャーカンファレンス)」のアフターイベントに参加してきました。各社のEMやVPoEの方々が、組織づくりやマネジメント、AIの活用についてどう考えているのか、非常に刺激的なお話を聞くことができました。

本記事では、イベントで特に印象に残ったセッションのメモと感想をまとめます。

立ち上げ期のプロセス設計と改善:新チームが最速で成果を出すためにやったこと (りゅう / 株式会社UPSIDER)#

上場のための法人カード | UPSIDER

UPSIDERの「PRESIDENT CARD」チームにおける、立ち上げ期に行われた取り組みの紹介でした。

特に記憶に残っているのは、PR(Pull Request)レビューに関するルール作りの話です。組織編成の初期段階で、細かなルールを定める際に 「PRのタイトルにPrefix(プレフィックス)を導入して意図を明示的にする」 という方法が紹介されていました。

Prefix(プレフィックス)とは
feat:(新機能)、fix:(バグ修正)、docs:(ドキュメント更新)、chore:(雑務)といった接頭辞(Prefix)をPRやコミットメッセージの先頭につけるルールのこと。Conventional Commitsとも呼ばれます。これにより、レビュアーはそのPRが「何のための変更なのか」をひと目で把握でき、レビューの負荷軽減やコミュニケーションの円滑化に繋がります。

これ自体は導入している企業も多いと思いますが、ミソなのは「これを立ち上げ当初のメンバー(エンジニアだけでなくBizサイドのメンバーも含め)全員でルール化して実践したこと」

エンジニア以外の職能が絡む場面でもレビューを依頼する機会があるため、職種を越えて共通の言語・ルールを持つことは非常に重要だと感じました。デザインに対するレビューにも応用できそうです。

セッション内で触れられていて気になった書籍もメモしておきます。

挑戦の「場」を組織的に設計する!挑戦と成長を加速させるミニプロジェクト制度の実践 (sakito / サイボウズ株式会社)#

挑戦の「場」を組織的に設計する!挑戦と成長を加速させるミニプロジェクト制度の実践 | ドクセル

資料が公開されているため、詳細な内容は割愛します。

社内で実践されている「ミニプロジェクト制度」の紹介でした。個人の挑戦と成長を加速させるためのプラットフォームとしてどのように機能しているか、そして意思決定のフレームワークである「DACI」をサイボウズ流にどうアレンジしているのかが解説されていました。

生産高が2倍以上になるためのエンジニアチームの再定義 (なかむらさん / 株式会社GENIEE)#

登壇者の方のnote記事:自分たちでつくり出す最高のチーム 〜事業CTOが語るジーニーの世界〜

「生産高が2倍以上になる」という理想を実現するための課題整理と、コーディングの意義を再定義するプロセスが見事で、印象に残りました。

AI活用における「5つの壁」#

社内でのAI活用度を分析した結果、以下のようなフェーズと「壁」が存在することが分かったそうです。

  • Lv 0:AI関係の機能は何も使っていない
  • 〜〜〜(「経費精算の壁」が存在)〜〜〜
  • Lv 1:AI検索のみ(これだけでもAI利用者の70%がここで止まっているとのこと)
  • Lv 2:インライン補完(GitHub Copilotなど)
  • Lv 3:対話型生成(ChatGPT, Claudeとのチャット)
  • Lv 4:エージェント委託(自律的なタスク実行)
  • 〜〜〜「人間が介在しない仕組みを作れる人材の壁」が存在〜〜〜
  • Lv 5:自動化ワークフローを組める

各段階の解像度が高く、特にレベル1とレベル4にある大きな「壁」には非常に納得感がありました。
私自身も自動化ワークフローを本格的に組んだ経験はまだ少ないため、ここを目指すべき目標として捉えられたのが大きな収穫でした。

「仕組み化」の課題を解決し、自動化を進めるアプローチとして紹介されていたのは以下の通りです。

  1. プロンプトやルールのテンプレートを作成し、横展開する。
  2. AIがユーザーの要望をヒアリングし、Linear(Issue管理ツール)にまとめる。
  3. スペシャリストAIと対話して仕様書(Spec)を作成し、AIにそのSpecを渡して開発を依頼する。

このアプローチを聞いて、自分はデザイン関連のタスクに応用を効かせないだろうかと考えていました。
要望をAIにヒアリングさせてドキュメント化するのは一見骨が折れそうですが、Difyのようなワークフロー構築ツールを使えば、ミニマムに実現できるかもしれません。

最終的な自動化に向けては、AIエージェントのガードレールとなるルールやワークフロー(プロンプト等)を充実させ、coding rule を「会社の共通資産」として育てていくという視点もとても特徴的でした。

「デザイン生成の自動化ができるのか?」という視点で考えると、完全に0から1を創り出す状況でなければ難しいというのが私の個人的な考えです。ただ、既存のコンポーネントを組み合わせたり、デザインに着手する前段の存仕様・ガイドラインチェックを自動化する部分なら活かせる道はありそうです。これについては別の記事で深掘りしてみようと思います。

生産性向上について話すときは主語について気をつけるべき、という考えも共感しながら聞いてましたね。
「生産性を上げました!」と言うとき、その対象範囲(会社 > 部署 > チーム > 自分)が大きいほど価値が高いという話題です。

自分の現状の立ち位置を定義し、「じゃあ次は1段上のレベルに至ることを目標にしよう」と前向きに考えられるセッションでした。これから色々な人に話して回ろうと思います。

“足りない”と言われて見えてきた、EM半年の試行錯誤 (こぶかた / 株式会社 SmartHR)#

上長やマネージャーからの「フィードバック」についての発表でした。
私自身、多ければ多いほど嬉しいと感じるタイプなので、全く他人事ではありませんでした。

SmartHRさんのカルチャー「フィードバック・イズ・ギフト」のもと、フィードバックは「質」と「鮮度」を意識して行うというお話が印象的でした。
そして「EMは(不測の事態やメンバーのサポートのために)余白を作っておくことが大事」という言葉が胸に刺さりました。

EMの透明性をどう作るか ─ 社内ラジオを始めて見えてきたこと (Genki Sano さん)#

「良いマネージャーは暇そうに見えた方が優秀」という定説に関する話題から始まりました。
しかし実態としては、EMの役割定義が定まっていないと「単なる便利屋」になりがちで、結果としてEMを目指す人が増えず、メンバーにとっても(EMの仕事が)自分ごと化しづらいという課題があります。

明確な役割定義を行うことで認識のズレは減ったものの、「自分ごと化」の難しさは依然として残ったそうです。

EMの仕事は「意思決定」に偏りがちです。
OODAループ(Observe, Orient, Decide, Act)の中で、メンバーにマネージャーの仕事を理解してもらうには、EMが「今何を考えているか(ObserveやOrientの部分)」の透明性を高めることが重要だとSanoさんは語りました。

その透明性を作るための施策が「EMラジオ(社内ラジオ)」だったそうです。
完了した成果だけを報告するのではなく、プロセスや「考えている最中のこと(前半部分)」を見せることを意識して発信を続けた結果、「今どんなこと考えてるんですか?」と直接聞かれることが減った(=考えがすでに周囲に浸透している)という成果が得られたと言います。

ラジオの運用を続けるための「無理のない工夫」も非常に参考になりました。

  • テーマ決め: Miroを使って非同期でアイデアをストックし、5分程度ですぐに決まるようにする。
  • 収録タイミング: 社内勉強会の直後に実施し、そのアーカイブ配信に相乗りする形で配信する。
  • コンパクトな時間: 毎回15分くらいの短い尺に収める。
  • 低コストなフィードバック: アンケートを活用し、リスナーの声を低コストで集める仕組みを作る。

雑多な考えであっても、とにかく話に出して共有すること自体に大きな意味があるのだと気づかされました。


おわりに#

イベント全体を通して、立ち上げ期のルール作りからAIのワークフロー化、そしてマネージャーとしての立ち回りや透明性の担保まで、実践的な知見を多く得ることができました。
まずは自分のチームでも「1段上のAI活用」と「プロセスを共有する透明性」を意識して、日々の業務に取り組んでいきたいです。